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一般社団法人日本グリーフアカデミー4分で読めます

「死に慣れることが、一番怖い」(医介塾参加)

納棺師歴19年の講師から学んだ、お別れの時間の整え方

2026(令和8)年9月11日、日本グリーフアカデミーとして、昼は東京・有明で開催された「エンディング産業展」へ。そして夜は、医療・介護に関わる方々が集う「医介塾」に参加しました。

昼に考えたのは、AI・DXが進む葬儀の中で「人にしかできないこと」とは何か。

そして夜、その問いに重なるような言葉に出会いました。

「一番怖いのは、死に慣れることです」

今回の講師は、納棺師として19年のキャリアを持つ方。介護職の経験もあり、ご遺体を整える仕事の先にある「ご家族のお別れの時間」について語られました。

目次

  1. 納棺師の仕事は「お別れの時間」を整えること

  2. 「作り出す」のではなく「お戻しする」

  3. 一番怖いのは、死に慣れること

  4. 「次がない」という責任

  5. グリーフケアの視点から

1. 納棺師の仕事は「お別れの時間」を整えること

納棺師は、湯灌やお体の処置、髭剃り、化粧、着替えなどを通して、ご遺体を整えます。

しかし講師は、その本質をこう捉えていました。

ご家族が、大事な家族との別れを受け入れる時間を整える仕事。

ご遺体を整えることは手段であり、その先にあるのは、残されたご家族のための時間なのです。

2. 「作り出す」のではなく「お戻しする」

講師が大切にしているのは、故人をきれいに「作る」のではなく、その人らしい姿へ「お戻しする」という感覚でした。

そして印象的だったのが、

「私たちの『いい』と、ご家族の『いい』は同じではない」

という言葉です。

化粧一つでも専門家が決めるのではなく、いくつもの選択肢をご家族に示して選んでもらう。

その小さな選択の積み重ねによって、「お父さんらしい」「お母さんらしい」という姿へ近づけていきます。

3. 一番怖いのは、死に慣れること

19年間、納棺の現場に立ち続けてきた講師が、社員に繰り返し伝えていることがあります。

「死に慣れることが、一番怖い」

仕事である以上、技術や段取りには慣れなければなりません。

しかし、故人にまで慣れてしまえば、いつしか仕事が「作業」になってしまう。

取引先も、部屋も、仕事の流れも同じかもしれない。

それでも、そこにいる故人とご家族は、毎回必ず違います。

4. 「次がない」という責任

スーパーで嫌な対応を受ければ、次は別のお店を選べます。

しかし、大切な人とのお別れには「次」がありません。

支援する側にとっては数多くある現場の一つでも、ご家族にとっては、大切なたった一人との、やり直すことのできない時間です。

だからこそ、

「現場には慣れなければいけない。でも、死には慣れてはいけない」

という言葉が強く残りました。

5. グリーフケアの視点から

グリーフケアの視点から見ると、納棺の時間には大切な意味があります。

故人の「その人らしさ」を取り戻していくこと。

ご家族に選択肢を示し、自分たちで選んでもらうこと。

そして、支援する側の「正解」を押しつけないこと。

これらはすべて、大切な人を亡くした方に寄り添ううえで重要な姿勢です。

そして、「死に慣れることが一番怖い」という言葉は、納棺師だけのものではないと感じました。

医療、介護、葬儀、宗教者、そしてグリーフケアに携わる私たちすべてへの問いでもあります。

技術には慣れる。現場にも習熟する。でも、目の前の一人の死には慣れない。

あらためて問い直す夜となりました。

医療・介護の皆さまとともに

講演後の交流会では、日本グリーフアカデミー代表の白瀧が乾杯の音頭を務めました。

会場には、医療・介護をはじめ、さまざまな立場から「人の生と死」に向き合う方々が集まりました。

それぞれの現場で感じている課題や取り組みについて情報交換をしながら、職種や立場を越えてつながることの大切さを、あらためて感じる時間となりました。

グリーフは、葬儀や死別の場面だけにあるものではありません。

医療、介護、看取り、葬送、そしてその後の暮らしまで、人の喪失に関わるさまざまな場面があります。

だからこそ、日本グリーフアカデミーも、医療・介護・葬送などの垣根を越えて学び合い、つながりながら、グリーフを支える文化を社会に広げていきたいと思います。

今回の医介塾への参加を通して、その志をあらためて確認する一夜となりました。


※本記事は当日の講演内容をもとに、日本グリーフアカデミーの視点からまとめたものです。